琉球を支えた神女『ノロ』について紹介!ユタとの違いは?当時のお給料は?

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島暮らしのおかもってぃ
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こんにちは!

島暮らしのおかもってぃです。

 

沖縄の古代信仰である、御嶽信仰と火の神信仰を支えていたのが『ノロ』という神女たち。

いわゆる巫女さん的な存在にあたるのですが、

沖縄にはほかにも『ユタ』という超自然的な力を司る女性がいます。

 

えっ!?何が違うの?って疑問に思う人は多いはず。

というわけで今日は『ノロ』について紹介していきたいと思います。

●忙しい人のために10秒で分かるまとめ

・部落の祭祀を執り行ってきた神女たちが、琉球王府の神女組織に組み込まれ、『ノロ』と呼ばれるようになった。

・当時の給料は月6~10万円くらい

【ノロ】
職種:公務員
条件:血筋や家柄で任命
交信する対象:守護神やニライカナイの神々

【ユタ】
職種:個人事業主
条件:能力があれば(一応)誰でも
交信する対象:祖先の霊や人間の魂

そもそもノロって?

沖縄の祭祀を司る女性のことを言います。
農耕社会を生きてきた人たちにとって、農作物は天の恵み。

 

その豊穣を願うときに、ノロたちが祈祷を行ってきました。

 

古くから稲作を営んできた久米島では、稲の豊作を願う祭事が広く行われています。

代表的なものを紹介します。

アブシバレ(虫払い)

4月に行われる稲の虫払いのための行事。

稲から害虫が退散するように祈祷を行う。

ちなみに、お払いの効果はあるのかということについて、

久米島史話より仲原善忠氏のコメントが面白いので紹介しておきます。

ただやっても(意味は)ないだろう。一生懸命に田を耕し、畔の雑草も刈り、泥土を付け害虫の卵を封じ込みやれるだけのことをやり、その上真心を込めて神様に祈れば効き目があるが、いい加減にやっておたかべ言を申し上げても神様は聞き入れないでしょう。

沖縄の方言の中で有名な『なんくるないさ』

この言葉の本意は、やるだけやったら何とかなるさ、ということらしいです。

お祈りも一緒なんですね。

ウマチー(稲大祭)

6月に催される祭事で、夏の収穫が終わったその感謝を示す祭りだと考えられています。

祭りの様子については仲里村誌に記述があるので紹介いたします。

ノロや根神(ノロ以下の神女のこと)は前々日からノロの家に集まって精進潔斎し、祭りの当日は朝神・夕神と2回に渡って嶽々拝所を巡拝して豊作を感謝し、また来年の豊穣を祈ったのである。

ウマチーは今も毎年行われていて、その様子を見学することも出来ますよ。

ノロの起源は祭政一致の時代

按司たちが琉球を支配する前、祭政一致の部落時代。

人々は集落の草分けとなった一族をリーダーとして共同生活を送っていました。

 

集落をつくるときには、まず『御嶽』を選定します。

御嶽に祀られる神については、いろいろな意見があり過ぎてもはや僕にはよく分かりません。

 

一応まとめると以下の4つになります。

①ニライカナイからの来訪神を祀ったもの

②血縁関係のある祖先を神として祀ったもの

③血縁関係はないが、観念的なつながりを持つ祖先神を祀ったもの

④偉大な人物を神として祀ったもの

 

③は分かりにくいかもしれないですが、ものすごく大雑把に言ってしまえば、旧約聖書のアダムとイブとか氏神様のようなものだと考えてみてください。

僕らを生んだ元になった神様、みたいなイメージです。

 

いずれにしても、集落の安泰を願うための場所を設定し、そこで加持祈祷を行い、五穀豊穣を願い、祭祀を行ってきました。

この祭祀を執り行ったのが、その集落の草分けとなった一族の女性たちです。

彼女らは根女や根神(ニーガミ)と呼ばれます。

 

長らく彼女らが集落の政治を取り仕切ってきましたが、琉球王府の尚真王は聞得大君をトップとする三十三君体制を整え、神職組織を作り上げます。

各地の神女も組織に組み込まれていき、地区の神女組織のリーダーにあたる神女が『ノロ』と呼ばれるようになりました。

久米島においては、君南風(チンベー)をトップとし、その下に各地区のノロが指定されます。

そんなわけでノロは琉球王府から任じられた役職です。

今で言えば公務員。

もっと言うと国から命じられているので国家公務員ですね。

そう考えるとたいそうなエリートです。

ノロの給料は?

さて、こうなってくると気になるのが彼女らの給料ですよね(がめつい私だけ???)。

琉球王府の統治下で、神女らは極めて手厚い待遇を受けていたそうです。

 

仲里間切のノロたちにも1000坪近い土地を与えられました。

明治前期頃まで、ノロの給料は租税米の一部を差し引くという形で給与されたそうです。

後に金銭支給になりますが、明治43年に『諸禄処分法』が施行され、国からノロへ給料が払われることはなくなってしまいました

しかしその際に、退職金のようなものとして国債証券与えられ、戦前まではその利子が毎年支給されたようです。

 

仲里村誌に『明治15年(1882年)の月給』と『明治44年(1901年)の仲里村のノロの月給と退職金』が載っているのでご紹介します。

()内に、現在に換算した金額を記述しています。

現在の物価指数を1800とし、当時の都市部の物価指数から計算しました。

ただし、あくまで概算です。

明治15年(物価指数:0.38)

儀間ノロ
給料:13円15銭2里(62,300円)

城ノロ
給料:17円50銭8里(83,000円)

比屋定ノロ
給料:14円40銭4里(68,200円)

宇根ノロ
給料:22円20銭4里(105,200円)

比嘉ノロ
給料:12円77銭9里(60,500円)

山城ノロ
給料:16円87銭4里(79,900円)

※()内・・・物価指数を元に現在に換算

明治44年(物価指数:0.58)

儀間ノロ
給料:13円4銭(40,500円)
退職金:250円(775,800円)

城ノロ
給料:16銭(4,970円)
退職金:350円(1,086,200円)

比屋定ノロ
給料:38円8銭(120,400円)
退職金:250円(775,800円)

宇根ノロ
給料:44円8銭(138,700円)
退職金:400円(1,241,400円)

比嘉ノロ
給料:5円58銭(17,300円)
退職金:250円(775,800円)

山城ノロ
給料:37円48銭(116,300円)
退職金:300円(931,000円)

※()内・・・物価指数を元に現在に換算

 

えっ・・・相当安いんですけど・・・

月給10万円前後って生活できるのかしらと思ったのですが、明治15年当時の久米島のトップ、

仲里間切の地頭代の月給は63,500円

具志川間切の地頭代の月給は65,500円

当時の行政のトップと変わらない給料をもらっていたようですね。

 

たぶん今とは経済の形が違いますし、食料は今よりも自給自足的だったと考えられるのでこれくらいでも十分だったんだと思います。

ノロのヒエラルキーも見えてきますね。宇根ノロの待遇が抜群に良い。

明治44年を最後に、ノロに対して行政が給料を渡すことはなくなってしまったそうです。

以降は退職金の利子が毎年給付され、それが戦争直前まで支給されたとのこと。

ノロになるにはどうすればいいの?

まず家系が全てです。

ノロのほとんどは世襲制だからです。

 

その家柄の女性がノロに選ばれるわけなのですが、

何がしかの力を持っていると考えられた人が指名されたのか、指名された人が修行してその力を得たのか、資料が無いので判断が出来ませんでした。

ですが、祭政一致の時代から、女性は神の信託などを聞き分ける特別の能力を持っていると考えられていたのは事実です。

また、ノロに選ばれた女性たちは山に籠ったり、御嶽に籠ったりして、霊力を授かるための修行もしたことから、指名された女性が修行をしてそのような能力を会得していったという方が正しいかもしれませんね。

ちなみに、今帰仁のノロは長女が世襲制で引き継いで行くようです。(参照:沖縄タイムズ『祈り』

ユタとの違いは?

『ノロ』という言葉は聞いたことがなくても、『ユタ』という言葉を聞いたことがある人は多いのではないでしょうか。

ユタとは、超自然的な能力を用いて占いや治療、その他のあらゆる人生相談を行う者たちを指します。

●ユタ
神がかりなどの状態で神霊や死霊など超自然的存在と直接に接触・交流し、この課程で霊的能力を得て託宣、卜占、病気治療などを行う呪術・宗教的職能者。大部分が女性。
(中略)
ユタは人々の私的な呪術信仰的領域に関与し、神霊との直接交流状態においてその呪術・宗教的機能をはたす。このことからユタは、東北地方のイタコ、カミサン、その他の巫女とならんでシャーマン的職能者に位置づけられる。(沖縄大百科事典より)

ものすごいざっくりいえば、江原さんみたいな感じですかね。

『ノロ』は主にニライカナイの神々やその地域の守護神と交信するのに対し、『ユタ』はいわゆる霊、神霊や死霊と交信します。

ユタの起源

ユタの起源について、沖縄民俗学の父、伊波普猷(いは ふゆう)氏は以下のように述べています。

古くは神秘的な力を持っていて神託を宣伝するものであると信じられていたのでありますが、中にはそういう力を持っていない名義ばかりの神人もいたのでありますから、代わって神託を宣伝する連中が民間に出て、そうしてこれを以て職業とするようになったのであります。これがすなわちトキまたはユタと称するものであります。(伊波普猷全集第9巻民俗論考より)

要するに、根神やノロといった公職の神官の中には霊力があまり高くないのもいて、そういった神官は人々の信用を失った。

その代わりに民間の霊能者が支持を得て、彼女らが『ユタ』となったとのことです。

琉球王朝はユタが力を得ることを恐れてしばしば弾圧を行ってきましたが、彼女らが民衆からの支持を失うことはありませんでした。

ユタは民衆からクライアントを得て、彼らから相談料をもらいます。

公務員であるノロに対して、いわば個人事業主ですね。

相談料は特に決まっていません。

中には全財産を投入してしまう方もいるとのこと。

ユタになるには?

超自然的な力があり、修行をすれば誰でもなることが出来ます

まあ、『超自然的な能力がある』という条件は誰にでも当てはまるわけではないですが・・・

ユタとなった人の多くは、幼少期に病弱だったり、神霊から直接告知を受けたり、そんな不思議な体験をしてきたそうです。

ユタになる人は、生まれながらに運命づけられていると考えられています。

能力があれば、誰でもユタになることは出来ますが、なれるかどうかは生まれながらに決まっているということですね。

世襲制で決まる『ノロ』とは大きな違いがあります。

ただ、どちらもなりたいからといってなれるものではなさそうですね。

各学者の意見

ユタに関しては、各学者が実に手厳しい意見を投げています。

●仲原善忠のユタに対する意見
沖縄には昔からユタと言うものがあり、いろいろと根拠のないことを言いふらし、神の祟りだの祖先の祟りだのとまことしやかに言いふらすものがいて人民に害毒を流している。
神は人民に幸福繁栄を賜ることはあっても正しいものには祟りをなすことはない。いわんや祖先が子孫に罰を下し、祟りをなすと考えるのは誤りであろう。心を正し真心を尽くして以て神を敬する者、祖先を祀る者は譬えその形式は昔と異なっても或いはその外形は貧弱でもこれを喜びこそすれ、たたりこれに罰を下すなどと考えるのは誤りである。(仲原善忠全集第3巻民俗編より)
●伊波普猷(いは・ふゆう)のユタに対する意見
ユタの事などは馬鹿々々しいと思われる方があるかもしれませぬがこの馬鹿々々しい事が実際沖縄の社会に存在しているから仕方がない。
(中略)
沖縄の人民の大多数は皆悉くこの迷信に囚われた者であります。(伊波普猷全集第9巻民俗論考より)

本当かどうかは別として、個人的にはこういう超自然的な話は好きで興味があります。

ですがさすが学者の皆さん、かなり手厳しい批評ですね、笑

まとめ

以上、沖縄の神女『ノロ』について書いてみました。

地元の方と話すと、「あそこは神聖な場所だから近づかない方がよい」と言われることがあります。

都会に暮らしているとまずありえません。

多くの都市は神聖な場所や異界を排除するように設計されたからです。

 

神女を中心とした古代信仰が長らく続いてきた沖縄には、今でもそんな『異界』が多く存在し、人々はそれを大切にして暮らしています。

 

古代信仰のベースは『自然への畏怖』です。

それを失うことは自然に対する傲りにつながります。

『異界』が多く残る沖縄には、まだその心が残っているのではないかと個人的には思っています。

猛烈な台風も毎年襲ってきますしね。

 

 

しかし、古代信仰を継承する『ノロ』も深刻な後継ぎ不足に悩まされています。

久高島で後継者不足によりイザイホーが中止されましたしね。

 

ノロは世襲制なので、しょうがないと言えばしょうがないとは思うのですが、長らく続いてきた文化が消失してしまうことで、僕らは何を失ってしまうのか。

それを考えなければいけないような気がします。

 

では素敵なKumejimaLifeを♪

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