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毎年100人の人口減少が続く久米島。
1990年には1万人いた人口も、2018年現在は8000人前後にまで落ち込んでしまっています。
この危機をうけて久米島町は、2015年に第2次総合計画を官民共同で策定。
昨年度は、総合計画に基づいて行われている島の様々な活動を紹介する『久米島夢まつり』も開催されました。
人口増加を目指したこうした取り組みが徐々に行われており、僕も積極的に参加させていただいております。
しかし、1つ考えたいことがあります、
それは、「人口減少は本当に悪なのか?」ということです。
人口が減ることに対しての悲観的な考え方が強すぎると、減ったから戻そうという単純な議論になりかねません。
それだと本当に大切なことを見失ってしまう気がしています。
守るべきものを守るために、改めて人口減少について問い直してみたいと思います。
目次
そもそもなぜ地方の人口減少が問題視されるようになったのか?
地方における人口減少がこれほど注目されるようになったのはなぜでしょうか?
簡単にまとめるとこんな順番です。
- 人口減少、少子高齢化が進む
- 働き手が減り税収は減るのに、社会保障費増
- 国の財政を圧迫する(←実はこの考えが間違いなのですが・・・)
- 出生率改善させて、人口減少を止めないと!
- 出生率の低い東京への人口集中が原因
- 人口を地方に分散させ、地方創生!
以下、詳しく見ていきます。
日本の人口は2010年の国勢調査前後から減少し始めていますが、日本の出生率はずっと前から減少し続けていたため、多くの人が危機意識を持っていました。
このままだと少子高齢化が進み、税収減+社会保障費の増大を招き、国の財政を圧迫してしまう.
↑
←実はこの考え方が諸悪の根源で間違い。むしろデフレ下では政府は財政赤字じゃないといけないんですが・・・
そんな風に考えられ、少子化対策をしよう!ということになりました。
そのときに問題視されたのが、出生率の低い大都市東京への人口集中。
災害大国日本において、人口の過度な集中はリスク以外の何物でもないですし、少子化対策にもなると考えられ、地方への人口分散、地方創生の考え方が流布していきました。
そして、2014年にいろいろと物議を醸した「増田レポート」が発表されます。
これは元総務大臣の増田寛也氏が座長を務めた日本創生会議でまとめられた資料。
そしてこのレポートの中で、日本全国約1800の地方自治体のうち、896の自治体は消滅する可能性があると発表されました(久米島も消滅可能性都市の一つ)。
このレポートを契機に「地方消滅論」が語られるようになり、故郷を守るために人口は維持しなければならないという考え方が日本全国に広まるようになりました。
確かに住む人がいなくなってしまったら町が無くなることは事実ですが、センセーショナルな地方消滅論に注目が集まり、「故郷を守るために必要なことは人口を維持することだ!」
そんな考え方が広まってしまったのだと思います。
確かに、東京への一極集中は変えるべきですし、人口減少により失われてしまうものもあるとは思います。
ただ、ただでさえ日本の全人口が減る中、世界の人口増加も70~80年後には止まると言われている中、人口増加モデルを考えることは無理があることだと思うんです。
それよりも、人口が減る中でどのように豊かさを担保するか?
そのことを考えるべきなんじゃないかと思うんですね。
人口増加は、豊かさの追求の延長線上に偶発的にあるべきで、第一義に求めるべきものではありません。
むしろ、人口減少を契機ととらえ、島の発展につなげていく、そんな考え方をしていかないといけない気がしてます。
人口減少悲観論を乗り越える
人口減少悲観論を乗り越えるために、実際に、人口減少は悪い事ではないと言っている方々の意見を書籍からいくつか紹介します。
「日本」という規模感で考えている著者がいますが、参考になる部分は多々あるかと思います。
「日本の衰退は必然?経済学の答えはNo!」吉川洋
東京大学教授名誉教授の吉川洋氏はその著書『人口と日本経済』の中で人口減少が必ずしも経済衰退につながるわけではないと述べています。
人口減少は確かに重大な問題なのだが、その一方で、わが国では日本経済の経済成長について「人口減少ペシミズム(悲観主義)」が行き過ぎている。(吉川洋『人口と日本経済』より)
地方創生に至るまでのロジックは
- 少子高齢化
- 税収減、社会保障費増大、ヤバくね!(←繰り返しますがこの考え方は間違い。)
- 少子化解消しないと!
- 東京への一極集中が一因
- 地方への人口分散、地方創生だ!
ものすごくざっくりとまとめるとこんな感じでした。
吉川氏が批判的に検証しているのは、税収減の部分。
税収が減ってしまうと考えられている根拠は、人口が減ると働き手が減ってGDP(国内総生産)が縮小するというものです。
しかし、GDPは人口の増減によって決まるものではありません。
労働生産性によって決まるものです。
実際に日本の人口の増加率とGDPの増加率を見てみると、人口の伸び率よりGDPの伸び率の方がはるかに大きいことが分かります。

参照:少子高齢化と経済成長
それほど人口が増えていないのに日本のGDPを世界第2位まで押し上げた要因は、労働生産性の向上、イノベーションによるものに他なりません。
人口が減ったからといって税収が必ずしも減るわけじゃないんです。
社会保障費は確かに増大しますが、その分は生産性の向上で必ずカバーできるはずなんです。
↑
何度も書いてて申し訳ないのですが、社会保障費が増大して国の財政が悪化するというのは間違いです。今はこの考え方が主流になってしまっているので仕方なくこんな風に書いています。
人口にしても寿命にしても、それに大きな影響を与えるのは「一人当たり」の所得である。一人当たりの所得を上昇させるのは「イノベーション」だ。これが先進国の経済成長を生み出す源泉である。(吉川洋『人口と日本経済』より)
久米島でも、人口減少を嘆く必要はなく、労働生産性をあげ、所得の向上を目指すべきなのかもしれません。
「少子高齢化が地方の賃金向上をもたらす」三橋貴明
吉川洋氏は、GDP成長率と人口減少は関係がないことを示したに過ぎませんが、作家でありエコノミストの三橋貴明氏はその著書『財務省が日本を滅ぼす』の中でもう一歩踏み込んだ言い方をしています。
仕事の量は、それほど減らない。それに対し、生産者は減る。(中略)需要に対して供給能力が不足するという環境が出現することになる。すなわち、インフレギャップ化だ。(中略)企業はインフレギャップ化で生産性向上に成功し、顧客の需要を満たすことができれば儲かる。儲かるとなれば、企業は負債を増やしてでも投資を拡大する。(三橋貴明『財務省が日本を滅ぼす』より)
ざっくりまとめるとこんな感じです。
- 仕事の量(需要)は変わらない。むしろ増える。
- 労働力(供給)は減っていく一方。
- 需要が供給を超過する、インフレギャップが生まれる。
- 需要がたくさんある状態だから、ものやサービスを作ったら売れる状態が出来る。
- 企業が投資を増やせる。
- 経済が活性化する。
企業が投資活動を行わなくなくなるのは、需要がないからなんです。
誰も欲しがっていない商品を作りたいとは思いませんよね。
逆にみんなが買うと確実に分かる(需要が大きい)場合、企業は喜んで作るはずなんです。
人口減少、高齢化による需要の増加、供給の減少は、まさにこの状態を作り出すわけです。
投資の増加は生産性の向上をもたらし、一人ひとりの所得向上につながります。
三橋氏はさらに、地方には今ビジネスチャンスがたくさんある、と述べています。
少子高齢化に端を発した生産年齢人口比率の低下、及び東京一極集中による地方の人で不足は、現地に残った若者に実質賃金上昇の機会をあたえるのだ。(三橋貴明『財務省が日本を滅ぼす』より)
労働力の不足は、ビジネスチャンスを生む。
デフレ不況が続いている日本において、そして地方において、人口減少、少子高齢化はむしろ経済成長、所得向上のチャンスだと取ることも出来るんですね。
「人口減少は全く問題ではない」落合陽一
落合陽一さんは、大学教授やメディアアーティスト、株式会社の社長など、様々な顔を持ち、日本で最も注目されている研究者。
人工知能やバーチャルリアリティなど、現代のテクノロジーにものすごく秀でている方です。
2018年に発売された彼の著書『日本再興戦略』の中で、少子高齢化はむしろチャンスだと言われています。
主な理由は3つ。
①機械の打ち壊し運動が起きない
今後、テクノロジーの進化により、仕事の機械化はいやおうなく進んでいきます。
そのときに人手が余っている状態だと、人間の仕事が機械に奪われる可能性が高く、機械の打ち壊し運動が起こる可能性があります。
人口減少によって、人手が足りていない状態であれば、機械化はむしろ歓迎されるようになり、テクノロジーの導入がスムーズになるというものです。
②少子高齢化対策の技術は今後海外へ輸出可能
日本は、世界中の国に先だった課題先進国。
今は人口が増えている他国にも、近い将来必ず少子高齢化の波が訪れます。
そんな国々に、少子高齢化問題を解決した日本の技術を輸出するチャンスが生まれるというもの。
③子どもにお金をかけられるようになる
子どもが減ったら必然的に、もっと教育にお金をかけられるようになります。
こうして次世代を担う子供たちを育成しやすくなるというもの。
こうした背景から落合氏はこうも言いきっています。
少子高齢化と人口減少でテクノロジーについてはテクノロジーで対処していくことが出来るので、何の問題もありません。むしろ、人口増加のほうが大変です。人が増えている状況で機械化を進めていったら「(機械)打ち壊し運動」が始まります。我々は人口減少を嘆くどころか、「運良く減少してくれてありがとう」と感謝すべきなのです。(落合陽一『日本再興戦略』より)
この人めっちゃ頭が良くてキレキレなんですが、やっぱり考えていることがすげーなと感心してしまいます。
改めて、紹介した3人の主張を簡単にまとめると
吉川洋氏「人口減少しても経済が衰退するわけではない。」
三橋貴明氏「人口減少は経済成長のチャンスだ。」
落合陽一氏「人口減少は全く問題でない。日本再興のチャンスでしかない。」
経済成長志向が良くないみたいな考え方も一部ありますが(個人的には不賛成、消費は減ってもいいが投資は絶対に減らしてはいけない)、とりあえず人口減少は必ずしも悪い事ではなく、むしろチャンスとして捉えることも可能なんです。
失われるものの、本質を守る努力を
そんなわけで、「人口減少はそんなに悪い事ではないかも」みたいな感じになってきましたかね?
でもたしかに人口減少によって地域から失われてしまうものも多くあるわけです。
例えば地域行事。
久米島の人口が多かったころは、多くの集落で行事が行われていましたが、人口減少により活動を維持できなくなった集落が多数あります。
寂しい事ではありますが、僕は人口規模に応じて元々あったものが無くなってしまうことは、ある程度しょうがないことだと思ってます。
もちろん、絶対に途絶えさせてはいけないものもあるのでそれは死守ですが・・・
それよりも、地域行事を通して人々が守ってきたものの本質を維持しないといけないんです。
地域行事を通して守ってきたものは、地域のつながりだと思います。
人と人がまとまるには、助け合って生きていくには、共同作業を通して同じ物語を共有することが必要なんです。
地域行事が紡いで来たのはそんな人々の絆なんじゃないかと思うんです。
地域行事も維持出来たらそれは素晴らしいけど、より守るべきは地域のつながり。
地域行事が行えなくなったとしても、別の方法でこのつながりを維持する方法を考えることが大切なんじゃないかと思っています。
ただ、どうやったらいいかは僕にも分かりませんが・・・>_<
他にも人口減少により失われてしまうものは多くあります。
学校の数は減る可能性が高いです。
病院も今の規模を維持することは難しいかもしれません。
空き家や耕作放棄地が増加し、ゴースト集落が出来るかもしれません。
これらはもちろん、起こらない方が良いことであるのは間違いないと思います。
ただ、人口が減ってしまったら維持することが難しくなるのも事実。
そんな中、暮らしを維持していくために、守るべきものを見極め、守る必要があるんじゃないかと思うんですね。
まあ理想論と言えば理想論なのかもしれませんし、医療環境など難しい問題はいろいろあるとは思いますが・・・
豊かさを守ること
人口減少はあくまで“起きている現象”に過ぎません。
人間は進化の過程で、『現状維持を好む』という特性を身につけてきました。
だからこそ、「今まであったものが無くなったら取り戻そう!」そんな意見が強くなってしまうのは仕方のないことだと思います。
でも、そのときに一歩引いて、本当に守らなければならないことは何なのか?
そんなことを考えられたら、大切にしたいものを残し続けることが出来るんじゃないかと思うわけです。
本当に守らなくてならないことは『豊かさ』。
島で豊かに生きていくには何が必要か?ということをだと思います。
この問いを長期的な視点で考えないといけません。
一定量の経済水準も必要かもしれません。
ご近所同士の助け合いも欲しいかもしれません。
悩みを打ち明けられる友人がいればいいのかもしれません。
何かを守るためにはたぶん、何か捨てなければいけないものも出てくるかもしれません。
もし、島の諸問題を解決することが出来たら、課題解決先進地として、その技術を輸出することも出来るようになります。
人口減少はマイナスにもなるしプラスにもなり得る。
どちらと取るかは島の生き方次第だと思います。
最後に
もちろん、島で行っている施策は人口増加を目指すというより、島で幸せに生きることを目指したものがほとんどです。
総合計画のコンセプトも「内を充たし、外からいざなう」
まずは豊かに暮らすことを目標にしています。
ただ今回、あえてこんな記事を書かせていただいたのは、「人口減少の何がいけないのか分からない」という意見を多く聞くからなんですね。
この記事がそんな皆さんの思索の助けとなれば幸いです。
それでは素敵なKumejimaLifeを♪
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