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人には人の、生きてきた人生があるように
土地には土地の、紡いできた物語があります。
人口減少・超少子高齢化など、未曽有の危機に直面する昨今、土地の歴史を見直し、久米島が有してきた価値観、島としての気質を明らかにする必要があるのではないかと思います。
久米島は受け入れの気質がある、とよく言われます。
水が豊かで米が豊富だった久米島は、古くから豊かな島。
だからこそ、外から来た人たちを積極的に受け入れてきた歴史があります。
ただし、久米島はただの受け入れの島ではありません。
僕なりに解釈した久米島の受容性とは『セジを読み、外部と共存する力』です。
セジを読むとは、潮目を読むこと、天命を読むこと。
大きな流れには逆らわず、外来のリソースと上手く共存する。
これが久米島の生存戦略だと考えています。
今回の連載では、歴史を紐解きながら、このような久米島性を明らかにしていきたいと思います。
第10章は「久米島の今」
今までは過去の歴史を紐解いて来ましたが、ここからは現在、そして未来を見ていきたいと思います。
コバルトブルーの海。
白い砂浜。
綺麗なサンゴ礁。
観光地としては申し分ない久米島。
ですが、観光客として島に来たのでは決して見えない島の実情・課題があります。
やや堅苦しい話ですが、今回は久米島が抱える課題について紹介していきたいと思います。
序章「はじめに」
第1章「歴史を知る意義とは?」
第2章「琉球の古代信仰~御嶽信仰とは?」
第3章「琉球の古代信仰~火の神信仰とは?」
第4章「琉球古代信仰の衰退」
第5章「久米島の最高神女、君南風」
第6章「セジ(霊力)とは何か?」
第7章「集落のリーダー、ひや」
第8章「受け入れの島、久米島」
第9章「島を救った男たち」
久米島の今、年間100人の人口減少
久米島で今最も深刻な問題が人口減少。
10数年前から、年間100人ずつ減り続けています。
以下は久米島の人口動態を表したグラフです。

2020年以降は予測値ですが、2040年には6000人を割り5832人に、高齢化率は42%にも上ると考えられています。
子供の数は現在の半分程度になってしまうと予測されています。
この変化を止めるために、島では今様々な施策が行われていますが、それは次回紹介。
今回は人口が100人減っているということについてもう少し深堀していきたいと思います。
人口減少の原因は何か?
人口が減る要因は2つ
- 自然減・・・住んでいる人が死んでしまうこと
- 社会減・・・住んでいる人が出て行ってしまうこと
久米島の人口減少の主な要因は社会減。
進学や就職などを理由に島から出て行ってしまう人が多く、逆にUターンやIターン者が少ないという現状が年間100人の減少につながっています。
なぜ島から人が出て行ってしまうのか?
帰って来ないのか?
単純明快な答えはありませんが一例をあげるなら仕事面。
仕事がないんじゃない?というのはよく聞く意見ですが、実は仕事はあります。
久米島島ぐらしガイドの求人情報を見てみると、正社員を募集しているところもあります。
本当の問題は「就きたい仕事」がないからなんじゃないかと思います。
仕事はあっても、待遇が良いとは言い切れない現状があるからです。
事実、久米島町の給与所得の水準は、全国平均より低い沖縄県の平均よりも低くなっています。
以下は1人当たりの年間所得のデータ(2012年)です。
久米島町:190.6万円
沖縄県:203.5万円
全国:297.2万円
もちろん、都市部とは生活コストが異なるため単純比較はできないと思いますが、全国平均より100万以上低いのはけっこうな差ですね。
「仕事がない」とはよく聞くことですが、「就きたい仕事がない」という方が正確だと思います。
他にも教育環境や医療への不安など、様々な原因が重なり現在の人口減少が起きてしまっていると考えられます。
人口が減ると起きること
人口が減っている現状を知ると「やばい、人口を戻さないと!」と安直に考えてしまいがちです。
ですが、人口が減ってしまったら何が起きるのか?
それをしっかり考える必要があります。
国土交通白書2015、人口現象が我が国を取り巻く状況を参考にして、久米島になぞらえて紹介していきたいと思います。
①生活関連サービスの縮小

利用出来る母数が減ったら、利用する人が減るのはごく自然のこと。
その被害を一番に受けるのは、島の教育機関かもしれません。
久米島には現在6つの小学校2つの中学校、1つの高校がありますが、小学校の数は間違いなく減ってしまうと思われます。
以下は島内の小学校の全校生徒数です(2017年10月現在)。
- 仲里小学校ー131人
- 美崎小学校ー42人
- 久米島小学校ー59人
- 大岳小学校ー77人
- 清水小学校ー162人
- 比屋定小学校ー16人
人口が減ってしまったら、6校すべてを維持するのはかなり厳しくなってくると予想されます。
また、中学校や高校もクラス数が減少し、それに伴い教育水準が低下。
教育に関心のある世帯の島離れが加速してしまう可能性があります。
島内にある飲食店や商店も、人口規模が減ってしまったら存続させるのは難しいところが出てくるかもしれません。
医療施設も現在の規模を維持するのは難しくなるでしょうね。
②行政サービスの低下
人口が減少し、経済活動が縮小すると地方自治体の税収入は減少します。
それに対し、高齢化に伴い社会保障費は増大、気候変動や耐用年数の問題で公共施設の維持管理費は増える一方なので財政支出は圧倒的に増えることが予想されます。
地方自治体の財政は今後ますます厳しくなってくるでしょう。
今まで無料で行われていたサービスが廃止になったり有料化されてしまう可能性があります。
③空き家・耕作放棄地の増加

空き家や耕作放棄地は今でも問題になっていることですが、今後さらに増えていくと思われます。
特に小学校がなくなる可能性のある地域からの人離れが加速。
今でも一部の字(あざ=地区)では若者が少なくて青年会や子供会が作れないところがありますが、その流れは今後加速していくと思われます。
字の中には人が全くいなくなり、消滅してしまうところもあるかもしれません。
また、ここ久米島の場合は「墓の管理者」がいなくなるという問題も起きそうですね。
現在でも管理する人がいない墓がちらほらあるそうです。
④地域コミニティの機能低下

久米島町字比嘉総会の様子
人が少なくなり、現在の地域コミュニティを維持することは難しくなってきます。
人手が必要な地域行事、エイサーやハーリー、角力などの実施は困難になります。
地域のつながりが薄れると、知らない人が地域に増えるため、子供を外で自由に遊ばせることが出来なくなってしまうかもしれません。
『地域で子育てする意識』や『人と人とのつながり』といった島の良さは、地域コミュニティの存在を基盤としています。
人口減少がもたらす地域コミュニティの衰退により、そういった島の良さも失われてしまうのではないかと個人的には危惧しています。
人口増加モデルの限界
とはいったものの、人口増加ただ望むのは現実的な解決策ではないと個人的には思っています。
日本全体の人口はただでさえ減っています。
そんな中、それに逆らって人口増加を目指すのはかなり無理があるのではないかと思うんですね。
結局は日本国内のパイの奪い合いですからね。
どうしても増やしたかったら、海外から移民を受け入れたりしない限りはきついと思われます。
適切な人数で維持することを考えるのも立派な戦略だと思うんですね。
そんな中で重要なことは、『本当に大切なものは何か?』という問い。
行政サービスの縮小など人が減ったら起きるであろう現象は、ある程度止むをえないことではあると思います。
でも、決して失ってはいけないものもあるんじゃないかと。
それは島で育った誇りかもしれません。
ご近所同士の助け合いかもしれません。
おじー、おばー、おっかー、おっとー、孫、3世代にわたるつながりかもしれません。
本当に大切なもの、後世に残したい島の遺産。
人口が減ったとしても、守っていきたい何か、それを考えて、全力で維持しないといけないと思うんですね。
ぶっちゃけ人口は減ります。
かなりの高い確率で。
よくて維持が精いっぱいでしょう。
それでも維持していきたい、残していきたい島の大切な財産は何なのか?
「人口が減ったから戻そう!」みたいに安直に考えるのではなく、本当に守りたいものは何なのかを各人が真剣に考え、動いていくことが必要なんじゃないかなと、そんなことを思います。
まとめ
観光地としては美しい久米島ですが、綺麗な海からは想像しえない様々な課題が存在します。
その一例として人口減少問題を取り上げてみました。
実は沖縄県全体では人口は増え続けています。
そんな沖縄の中で人口が減り続けている久米島。
増田レポートによるいわゆる『消滅可能性都市』にも指定されています。
「これはやばい!じゃあ戻そう!」と考えたくなるのはよく分かるのですが、日本全体のパイが縮小している中、人口増加を目指すのはあまりにも高いハードルなのではないかと。
この現状を変えていくためには、「年間100人の人口減少」というキャッチ―な数字に捕らわれるのではなく、本当に必要なことは何かを考え実行していくことが必要なのではないかと個人的に思います。
次回は、そんな島の危機を救うために行われている取り組みを紹介していきます。
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